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2017年4月22日 (土)

『繊細な真実』ジョン・ル・カレ

1449花たちは元気です。花瓶を変えました。

朝からパスワードでじたばた。

入れないぞ、仕事ができない、どうしよう。

念のため元のパスワードを入れてみたら入れた。

あっちゃー、なんということだ。変更ボタンを押し忘れたと思われます。一安心!ほっ。

    *

さて、『繊細な真実』です。

スパイ小説の巨匠と言われて久しい。ジョン・ル・カレの作品。

読みながら、最初、思ったこと

私にはスパイ小説は理解できない。

最初、何の話なのか良くわからなかったから。

分からないはず、わからないように書いてある。

外務省の話。

ル・カレの長編23作目の本作である。

     *

この本のテーマは、イギリスの公職守秘法で守られる「秘密」について。

それは、取り締まる側がその気になればそうとう恣意的な運用が出来そうな法律だということだ。

ちょうど、2014年12月、日本でも「特定秘密の保護に関する法律」が施行され、その中に同様の事案が「特定秘密」として『指定されている、と訳者あとがきにあった。

しかもそれがさらにバージョンアップされようという勢いの今なのだ。

この本では、最後どこから来るのかわからないサイレンの音に囲まれ、真実を述べようとする者の無力さを表している。

どこかに真実を知らせる勇気は開かれているのだろうか。行くのだろうか。

読みにくかったと感じたのは訳者のせいではなく、作者が84歳の今にしても

表現文体において実験的なものに挑戦しているということによるらしい。

ナイロビの蜂 」という素敵な映画の原作者でもある。

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この本の最後に「グローバリゼーションと無関心と闘い続ける巨匠の矜持

というテーマで真山 仁さんが文章を寄せている。

それを読むと私の思っている漠然とした不安や、そこまでの流れがよくわかった。

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冷戦構造が崩壊した時スパイ小説は死んだと言われた。

そこに出てきた、新しい敵が「グローバリゼーション」

今までのスパイ活動は国益を守るために行われていたが、東西冷戦が消滅した(ように見える)今は異なっているという。

ITとインターネットの普及で世界的共通通貨である「ドル」は地球規模でビッグビジネスを成立させる。

自国内での経済に先が見えてきた先進国は市場を地球規模に膨らませた。

そして、グローバリゼーションの浸透で地球全体が豊かになるとの思いを持った。

EUなどもその例と言えるという。

しかしそれもまた内向きになりつつある現状も。

国境もないと思え、それがゆえに富はより一部の人に集まり、人は国益ではなく各自の企業益を求める。

逆に国家が企業に媚びるようにもなり、国としての力を持たなくなった。

そのようなグローバリゼーションの名のもとに、人々を苦しめるシステムの実像に光を当てたのが「ナイロビの蜂」だという。

たしかに貧しいアフリカで、しかも病気の薬に対して利益を得ようと暗躍する人々の話だった。

それは今でも形を変えつつ、同じようなことが行われているという。まったく。

さらにまた、ル・カレはもう一つ「無関心」という大きな敵を見つけたのではないか、とも述べている。

この「無関心」こそが取り返しのつかない争いやディストピアを生み出してきた。

本当は、もっと多くの人が一見豊かに見える世界の狭間の闇に関心を持つべきなのだ。

知らないふり、無関心は罪が大きいという。

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私もそう思う。

本文の後のこの文が妙に(?)(ではない、「しっかりと」)心に浸みたのだ。

今の世の中、夢と希望の理想の世界と思われたものは

本質は利己的な経済社会に変わりがなく、

しかもそれはあやふやで、確固たる絆ではありえないということか。

そういうことが

現実の世の中で我々に確かめられているのかもしれない。

今の世界の状況を考えると、その行きつく先はどうなるのか、

あっちもこっちも不安な要素がうごめいている。人間の英知を信じたい。

そう思う私の不安をこのあとがき、賛辞は

ひとつの考え方として、すっきりとわかりやすく明らかにしてくれた。

内容の理解が難しかった割にはいろいろ考えることができた。

2016/9/21  17

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