« ミモザでリース | トップページ | 大みか饅頭 »

2017年3月17日 (金)

『カノン』 篠田節子

心の深層

ホラーとあるがそうは思わなかった。

     *

若いときに何かに夢中になっていた

それが20年たって

日常に追われ、その中に埋没している自分

その当時の仲間に会い、

その時の自分を見つける

あるいは

いままで表向き装って生きてきた自分の中身が空洞だったと

思い知る

そんな思いが新しい道を

あるいは新しい気持ちを思い起こさせ、

後半の40年だかの人生に望みを託そうとする

不思議なテープと

その音楽は

自分自身が気が付かないように過ごしてきた

自分自身のこころへの警鐘のベルだったのかもしれない。

いつだって

思ったらやり直せる。

その道に向き直ることは出来る。

たとえゴールに届かなくても。

思いだけは持ち続けられる。

そんなことを考えた。

    *

「…。理想と妄想を少しずつ捨て去って、潮時を見てこのあたりで手を打とうか、と決意するところまで、人は成長する」

 

「自分を取り巻く日常というものも、ごく脆い、小さな約束事の集積にすぎないのかもしれないという気がしてくる。生活にしっかりと根を張ったつもりでいても、実はその生活自体、粘つく液体にも似て、案外頼りなく流れていくものかもしれない。」

 

「その手の先に誰かがいる。置き去りにしてきた自分自身だった。」

彼女はこうして人生の目標を見つめなおし、そこを目指して再び進もうとしている。

人生の道半ばで立ち止まり、前を見、うしろを振り返り、

やがて胸を張って歩き出す主人公を見た。

    *

なかなかいい本だった。静かにじわじわ。

私的には、

絶え間なく聞こえる耳鳴りではなく、カノンが聞こえてきたらそれは面白いかな、

いや、やはり何も聞こえなくて

その時々に好きな音楽が聞こえるのがいい。(戻れないとは思うけれども。)

それが「健康!」ってもんだ。

内容紹介 

自殺者がのこした音楽テープは遺言なのか、それとも怨念なのか。曲を聴いた児童はひきつけを起こし、押入れのチェロはひとりでに弦をはじく。送り主は松本の旧家で作曲をたしなみ、同人誌を発行する「高等遊民」。気味の悪さにテープはうち捨てられるが、音楽だけ別のテープへと乗り移る。死者の真意をさぐるために音楽教師の瑞穂は奔走、その途上、彼女自身が封印してきた過去があばかれることに……。『女たちのジハード』で直木賞受賞の著者による異色ホラー長篇。  
(1999/4/10) 11

|

« ミモザでリース | トップページ | 大みか饅頭 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ミモザでリース | トップページ | 大みか饅頭 »