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2016年2月20日 (土)

『舞台』西 加奈子

低気圧が来るというので

母のところに行くのを明日に伸ばした。

予報では「あらし」のようと・・・

   *

好きな西さんの作品。

知らない作品だった。

軽く読めばそれなりに、じっくり読めばじっくりと。そんな本であった。

    *

「誰もが皆、この世界という舞台で、それぞれの役割を演じている。そのことに少なからず、疲弊している。だがやめることは出来ない。舞台は続いてゆくのだ。」

 

「父は田舎を捨てた。両親を捨てた。つまり、自分の原点を捨てた。全力で『自分のなりたい自分』を、そして、『皆に望まれる自分』を、それが間違いであったとしても、全力で演じ、だが自分のすべてを背負って、死んでいったのだ。」

    *   

それぞれの個人には、しがらみはあるとしても

その中心にあるものは「自分自身」なのだ。

「本当の自分」と「なりたい自分」と「皆に望まれる自分」との関係

内容(「BOOK」データベースより)

29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に…。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは―。思いきり笑い、最後にはきっと泣いてしまう。―圧倒的な面白さで読ませる傑作長篇。

(2014/1/10) 12

    *

あまりに自意識過剰で

着いたばかりのニューヨークで

旅行者とは思われたくなくて、

いかにも暮らし慣れている風に見せたい。

前半はそんな感じの、軽いコメディタッチで進む。

    *

こうしたことは

多かれ少なかれ

誰にもあることではないか、と作者は言う。私も思う。

たしかに自分がかくありたいと目指すものに、倣うことはいいことかもしれない。

父親らしく

母親らしく

男らしく

女らしく…

あぁなんなんだ。そのさき・・・人間らしく

    *

そして

大きく括ると

すべて「演じ」ているということだ。

自分の大事な人生を。

    *

「誰に見せてるんだ?」

俺は、この姿を、自分に見せているのだ。友人が許したって、誰が許したって、決して許してくれなかった自分に、俺は自分を見せているのだ。

    *

俺は、自分自身に対して、演技をしている。自分を欺くものに、本当の姿などない。」

    *

こうして主人公はどんどん突き進んでいく。真実を極めるべく。

作者独特のスピード感はすごい。

彼は、自分自身に対して、演技をし、自分を欺いていることを

自分で自覚している。

  *

基本的には「父と対抗する息子」

    *

後半はうわべだけでなく中身がむき出され。

結局、息子は多分

父が好きで

父だって・・・そうだったのだろう。

    *

本当の自分とは・・・

自分という個をしっかりと確立することだろうか。

亡くなった父親の残したピカピカの「ニューヨーク」旅の本。

それを余さず暗記して

父のお金で旅行に行く。

頭には父の言葉が浮かび…

結局

大っ嫌いだった父と同じ舞台を生きている。

   *

西さんも「自意識過剰の主人公」だと話されていたが、

自意識過剰も行きつくところ

自分を見つめ、自分の内面を冷静に見つめ、(弱点をとらえることだから)

自分をしっかり持つことの大切さにたどり着くのだろうか。

ならば

大いにその道を進み、自分の道を見つけようか。

    *

いろいろなことを考えさせられた。

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