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2013年10月 2日 (水)

『高熱隧道』 吉村 昭

読書ブログのお友達Ⅴさんは
幅広い分野の読書をされるが、ことのほか、吉村昭さんがお好きだと、私は思っている。

それを後ろから眺めつつ、
いつかは、と思いつつ・・・なかなか御縁はなかった。

それはたぶん
私がまだ突入していない、骨太(?)の分野であったためでもあった。
(私はご存知のように、ミーハーでエンターテインメント好きであるから。)

満を持して(?)
お奨めの取り組みやすそうな本をリクエストした。「高熱隧道」

作者は地道な長い調査を経て、一つのことをとことん突き進み、しかも筆致も押さえられていて、落ち着いて、読み手を作者側があおるような書き方はしない。

それでも、読み手は各自の想像力でそこから何かをとらえる、そんな作風である。
作者本人がそうだったのかもしれない。

手にしたのは、昭和63年文庫版で文字が8ポイント(たぶん)と今より小さく、あのころならそれでもよかっただろうけれど。紙面は薄茶色に日焼けして、なおさら読みにくかった。

※『戦艦武蔵』で記録文学に境地を拓き、同作品や『関東大震災』などにより、1973年菊池寛賞を受賞。現場、証言、史料を周到に取材し、緻密に構成した多彩な記録文学、歴史文学の長編作品を次々に発表。日本芸術院会員。小説家津村節子の夫。(ウィキペディアより)

数多くの賞を受けている。

1975/7/29 61

「史実」を題材とした小説は他にも数多くあるが、著者の小説がとりわけ「記録文学」と呼ばれるのはなぜだろう。本の紹介を読んでまずそう思った。

いろいろ調べてみて考えた。
むろん史実だけでは十分な文学作品にはならない。そこを補う個人的な、人物を描く場合にも、客観的に記述を述べることで、あまりそこに感情を込めない。

そこで、史実のなかに生きる人物も時にフィクションながら、作品の中で史実と同じ価値を得て、その中に生きて、描かれている。
その作品に登場する人物も、著者の取材と調査によって得た中から、個性が形作られているのだ。

登場人物がそこでどう話したのか、どう思ったのかなどは必要以上に語られず、読み手にゆだねられる。
そういう関係を生かしているのが、作者の無理に波を作らず、むしろ平坦な、客観的な、抑制のきいた文体であると言えるのだろう。..

そういうことが、彼の作品が「記録文学」と言われるゆえんであろうか。.

内容紹介

黒部第三発電所――昭和11年8月着工、昭和15年11月完工。人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。犠牲者は300余名を数えた。トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学。 

なんだか読んだ本の話をしていないようだが、ぜひ、Ⅴさんのブログでご覧いただきたく、(勝手に紹介しましてすみません。)
とにかく、私がいろいろ調べ、考え、来年こそは黒部ルート完走(断じて走ったりはしませんが。)したいと、固く心に誓った次第になり至ったこと、まさしくこの本の感想であるということです。
今年は無理とあきらめました。
同行者として最適な人も、忙しすぎて…
そして、各個人に及ぼすこういうことこそ
まさに記録文学としてのなせる業でございましょう。
史実だから、結果はわかっているのだけれど、
それを上回る事実、それはすごいものであり、深く心に残りました。
いっそう調べてみたいと。
Ⅴさん
どうもありがとうございました。
       *

2013年2013年、黒部第4ダムは完成50周年を迎えたという。
私が知ったのは1968年の映画「黒部の太陽」によってであった。
そしてこちらの本はその前の1940年完工の黒部第3ダムについてです。
先日、たまたま見たテレビで、ダム好きのタレントの方がいろいろな話をしていた。
結構私も好きだが、ダムカードは知らなかった。
ますます興味がわくダムへの道。

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コメント

拙いブログ、ご紹介ありがとうございます(*^_^*)
記録文学といわれる所以、なるほどとうなずきながら拝見しました~。
ダムが取り持つ吉村作品デビュー、嬉しいです。
これをスタートにどんどん・・・次は北海道つながりで羆を題材にしたものはどうでしょうか(笑)
ミステリ大好きないちさんが吉村を読まれたのが嬉しくて・・・。
黒部、来年ですか。
私も次男同行でと思っていますが、先日提示された日にちがいつも予定のない私の数少ない予定とヒットして泣く泣くキャンセル、次はいつになるのでしょう?
こうなったら放水時期を過ぎても、寒くなってもいいやと思っていますが。

投稿: VIN | 2013年10月 3日 (木) 18時50分

こんばんは Ⅴさん
ブログご紹介のお許しをいただき、ありがとうございます。

第二弾!熊つながりは、調べたら、2冊ほどありましたが、「羆嵐」でしょうか。
「いつか」と心に留めておきますね。

黒部、少し雪があるときでもいいですよね。
日程が合いますように。
大きな熊の足跡があったら、それは私です。あは

私も今、夫に宣言したところです。来年こそ。と。

投稿: いち | 2013年10月 3日 (木) 20時41分

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