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2013年4月22日 (月)

『マルセル』 高樹 のぶ子

ミステリ仲間のTさんのブログで知り、さっそく予約。

面白かった。
ドキドキはらはらではなく、しっとり落ち着いた文章。
すらすらと抵抗もなく、読み進んだ、最後まで。

前に読んだ「楽園のカンヴァス」に趣は、似ているが違う。

実際にあったロートレックの「マルセル盗難事件」をモチーフにして、ミステリ加減が多い内容。
(実際の事件もこれまた不思議だった。)

高樹さん特有の、落ち着いた文章で、
前半は主人公36歳(?)独身、部屋にはルンバ付き、の暮らしをする
千晶の恋模様が
まるで自信なく、おそるおそる進んでいくように、書かれている。
一緒に恋を始めた気分。

どちらかというと
そちらの面が多かったのかと思い始めるころ
やっと
マルセルも動き出す。

筋立てにすこし疑問も残るが
500ページ超を二晩で読んだのだから、やはり面白かったのだ。

最後が
パリで、あのモネのオランジェリー美術館。

「マルセル」に自分の知らない母を重ねて、追いかける主人公。

盛り上がって終わるところを感じたいと
最後の章はじっくり読んだが、
名前が最後の結びの章でこんがらがって、繰り返し読むことになった。
(もちろん私が悪い)

最後、マルセルが、母が、横顔でなく、現れ、
母を知らなかった千晶の行く先に明かりが見えたのだ。

実際に、あの事件をその後も追い続けた新聞記者に取材ノートを見せてもらったのが
作品の動機になったと、どこかに書いてあった。

絵画にまつわる本が2冊続いたが、
どちらも絵画という芸術を通して流れる
現代に至る長い時の流れと、その前を通り過ぎた多くの人々の思いが重なって、深みを与えてくれていると思う。

絵に心の重心を置きすぎると、また生きている人々の心が
見えなくなるし、
なかなか難しい題材かもしれない。

どちらに作者の思いが寄っているか。

「楽園のカンヴァス」のルソーへの思いが、より私には深みを感じた。
「マルセル」への思いは絵を扱ってはいるが、その奥の、人の思いだ。

この二冊を比べる必要は全くないのだが、
二冊が続いたものだから、つい・・・

芸術は言葉にできないところで、深い感情を与えてくれる。
そういう意味で、何なのかわからないけれどルソーの方が
ふしぎな色を私に残している、気がする。
芸術鑑賞、芸術の域に私を誘ってくれたからでしょうか。

28冊目

内容(「BOOK」データベースより)

予想できない方法でわたしは姿を現し、生き返る。遺された取材ノートから知った、ロートレックの名画『マルセル』盗難事件。1968年、嵐吹き荒れた時代の不可解な事件を、父はなぜ追い続けたのか。謎に導かれるまま、新聞記者・千晶は、東京から神戸、京都、パリへ…。実在の未解決事件をテーマに恋愛小説の名手が贈る芳醇な「絵画」ミステリ。

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