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2012年5月25日 (金)

『平成猿蟹合戦図』 吉田修一 

「猿蟹合戦」という昔話を下敷きにした話。

ずる賢い猿が信じやすい蟹を騙して利益を得、殺害し、殺されたその蟹の子供達に仕返しされるという話。いわゆる「因果応報」が主題となっている。

もちろん民話であるから、地域によって登場キャラクターや話の細部に違いがあり、最近では教育上の理由から内容が変わっていることもあるという。

「信じる者が悪いのか。」

騙しあい。復讐。でもそれほど、どぎついものではない。

「人を騙す人間にも、その人間なりの理屈があるんだろうって。だから平気で人を騙せるんだろうって。結局、人を騙せる人間は自分のことを正しいと思える人なんです。逆に騙される方は、自分が本当に正しいのかといつも疑うことができる人間なんです。本来ならそっちの方が正しいと思うんです。でも、自分の疑う人間を、今の世の中は簡単に見捨てます。すぐに足を掬われるんです。正しいと言い張る者だけが正しいと勘違いしてるんです。」

この辺りがポイントなのだろうが、最初読んだとき、意味が分からなかった。

「猿蟹合戦」という話を考えて行く中で、そこからお互いに騙し騙される関係に陥った世の中で、問いかけるのだ。

どうしますか?

どちらがわるいですか?ということなのだと思った。

「自分は正しいのだと言い切る者が勝つ。どちらがより大きな声で『自分はただしいんだ!』といえるか、・・・」

「大声で叫び続けられた者が勝つ。…本当にそれが正しいと自分で思っているのか、疑うのは今じゃないと・・・」

純文学のように深く心情を書き込み、こころを揺さぶられ、納得させられるものではない。

しかし、登場人物はそれぞれ作品の中で、生きていて、読み手を飽きさせず、楽しくさせる、という意味で
素晴らしいエンターテイメントである。

最後の感動がもう少しあったら・・・

内容(「BOOK」データベースより)

新宿で起きた轢き逃げ事件。平凡な暮らしを踏みにじった者たちへの復讐が、すべての始まりだった。長崎から上京した子連れのホステス、事件現場を目撃するバーテン、冴えないホスト、政治家の秘書を志す女、世界的なチェロ奏者、韓国クラブのママ、無実の罪をかぶる元教員の娘、秋田県大館に一人住む老婆…心優しき八人の主人公が、少しの勇気と信じる力で、この国の未来を変える“戦い”に挑んでゆく。希望の見えない現在に一条の光をあてる傑作長編小説  29冊目

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