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2011年9月 5日 (月)

『シューマンの指』奥泉 光 と8月のベスト

リクエスト本が来た。

「演奏なんかしなくたって音楽はもうすでにある。」

シューマンの指 (100周年書き下ろし) シューマンの指 (100周年書き下ろし)

著者:奥泉 光
販売元:講談社
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2010,7

51冊目

内容紹介

シューマンの音楽は、甘美で、鮮烈で、豊かで、そして、血なまぐさい――。

シューマンに憑かれた天才美少年ピアニスト、永嶺修人。彼に焦がれる音大受験生の「わたし」。卒業式の夜、彼らが通う高校で女子生徒が殺害された。現場に居合わせた修人はその後、ピアニストとして致命的な怪我を指に負い、事件は未解決のまま30余年の年月が流れる。そんなある日「わたし」の元に、修人が外国でシューマンを弾いていたいう「ありえない」噂が伝わる。修人の指にいったいなにが起きたのか――。
野間文学賞受賞後初の鮮やかな手さばきで奏でる書き下ろし長編小説。


繰り返しくりひろげられるシューマン論や「ピアノ協奏曲」を始めとした楽曲の分析などのうんちくの数々は、クラシックファンであってもどうだろう。つまるのか。
その詳しい説明は解説を読めばわかる気もする。
そう思って読み始めたが、これがシューマンの曲かもと思われる曲がそれなりに自分にも聞こえてくる気がする。
途中からはたえず話の流れの奥に、その音が聞こえる気がするのだ。
本作はとにかく音楽評論が本格的で細かく、それが本作の底流にあると思う。
半分は延々と続くシューマン論である。
ミステリとしての謎かけと謎解きは、その中に少し織り込まれていて、それは分量からいうと本の少し、シューマン論への先達でしかない気がする。
しかし読んでいくと次第にその中に音のないその音楽の美しさ。そしてその表された実際の音楽、それらが全編に漂わせる暗く秘密めいた緊張などがとらえられる。
これがミステリなのか、はっきりわかりきれないまま、読み進んでいく。そこではミステリの雰囲気を少しずつ感じ取ることはできるが、構成としてはどうなのだろう。最後の最後までミステリとしてはよくわからない。最後の部分。
これは単にミステリの仕掛けだけではなく、やはり音楽という長い歴史のなかで生きてきた「評論」というものがもたらす、リアリティがなせる技でもあろう。
すごいな、とは思った。
ただそれは単にミステリとしてではなく 、今述べたような感想からである。
単なるミステリと思うとどうでしょう。
8月の読書ベスト1は「ペンギンハイウェイ」か「空飛ぶタイヤ」である。
これではベスト2です。

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