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2007年11月11日 (日)

『千年の祈り』イーユン・りー

千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS) 千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS)

著者:イーユン・リー
販売元:新潮社
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今日までに返さねばならないので、旅から帰って必死に読んだ。
短編集なので読みやすかったかな。

デビュー短編集で数々の賞を受ける。(2007,7,31刊) 66冊目
北京生まれの作家が英語で書いた文章。

天安門事件のとき17歳だった作者は、その体制の中、自分の意見をはっきりいえない環境の中で、また古い価値観が生きる社会の中という二重三重の抑圧を受けているうちに自分の発言を「自己検閲」するようになってしまったようだ、と訳者あとがきにある。
その作者が新しい言語「英語」を手に入れて、書き上げる思い。
しかしそれはふるさと中国からは離れない。
表題作「千年の祈り」は言葉の通じない中国人の父とイラン人のマダムの心の交流である。
言葉を介さなくても通じるものがある、あるいは言葉は違っても・・・なのか。
どんな関係になるにも長い祈りがあったのだという思い。
だから長い祈りの中でできた関係を大事にしたい、しなければならないという話。
そういえば、そういう「母」や「子ども」の役をやめたい、やめられないという記述も多かった。「父と娘」になるにはおそらく千年の祈りがあっただろうというのに・・・

文章はあくまでもクールで硬質。
だからこそ、その中で語られる内容を自分なりに、叙情的にも読むことができる。
書かれている情景はクールではなく劇的でさえあるのだ。

描かれる人物像の中に作者の強い意志も感じる。
それにしても中国は大変だった。
どの内容も今のわれわれが読むと、寂しい悲しいものを含んでいるが
その中に天上からの日差しが差し込んでくるような気配と突き進む意志の強さ。
「千年の祈り」に託された思いを私も思った。

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