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2007年7月 2日 (月)

『トリップ』角田光代…私の居場所

読む本がなく、娘が置いていった本から。 35冊目

トリップ Book トリップ

著者:角田 光代
販売元:光文社
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「あなたは道を踏み外して今そこにいるの?こうなることを十七歳のときに予想していなかった?」
普通の生活を送っているように見える登場人物たちはそれぞれ何かを思っている。
「何一つ選べずにここにきたのではなく、選んできたのだと、それがよいものでもそうでないものでもそれを選んできたのだと、いつか言えるときがくるんだろうかと突然あたしは思う。」

 軽い気持ちで読んでしまえばそれだけの短編集、でもじっくり読むと言葉がしみこんでくる長編にもなる。
角田光代さんの作品はこれまではどちらかというと、だらしないからダメなのでしっかりしてれは大丈夫というようなような読み手が救いを得られるような読後感があるようだが、
この本では解説にもあるように作者の第二段階となって、そのままでは許さず一気に言い切っていく。
しっかり生活してきたはずなのに、自分が思い描いていた幸せからは程遠い、といった状況を真正面から突きつけている。

表題作「トリップ」から
「どうして結婚したのかと、どうして家庭をつくろうと思ったのかと、ときおり疑問に思うことがある。それは後悔ではなく、純粋な疑問だ。きっと今と逆のことをしていても、同じ疑問を抱いたと思う。…つまるところ、あたしは高校生だったあのときと同じことを考えている。いったいあたしに選択権なんてものがあるのだろうか。何かを選んだつもりで、結局何ひとつ選んではいないのではないか。選択権も可能性も持たず、ただただ、待つためにここにいるのではないか。待つ。なにを?」


「なんでえー? なんでえー?」とはじめる。「なんでー? なんでママは知らないのー? ねえなんでえー?」
 橋の上であたしを見上げて「なんでー」とくりかえす小さな男の子を、しゃがみこんで抱きすくめる。そうされることを予想していなかったらしい太郎はびくっとからだをこわばらせて、されるがままになっている。 
こんなに小さい。
入れものとして、こんなに小さいのだあたしもかつてこんなに小さかったはずだ。言葉も、不安も、絶望も、かなしみも、入りきらないくらいに。

短編集だがそれぞれが関係がある、同じ舞台。主人公が違う。あっちの脇役がこっちの主人公になる。スポットライトが転換していく感じ。これがまた面白い。こうして同じ街での連作とすることで、筆者の話の全体性が浮き彫りになり、テーマが一貫性して流れていることがわかる。
いま悩んでいる人には同じ悩みを実感することで、そこから始まるとは言えるかも知れない。解決策は書かれていない。それは各自の考えること。

 ぼくは突然、畳にぺたりと横座りした女の人を、思いきり抱きしめてあげたくなる。抱きしめて、そういうことってあるよと言ってあげたかった。似合わないのにそこにいなくちゃいけないことって、あるよ。ぼくだってそうだよ。ぼくに十二歳という年齢はあっていないよ。小学校にいるぼくは場違いのきわみなんだ。そういうことってあるよ。ね。

確固としたものなんてない。
誰も立派な大人じゃない。
ここにしかいられないからここにいる。でもここは合っていない。
変えたくても変えられない状況の中で、でもそこからはじめられる。
自分の場所探し。見方を変えたらいい風景が見えるかも。

そんな閉塞感の心にそっと隙間を空け、風を送る。
誰にだって吹いてくる風を感じることはできる。

何でここにいるの?
自問自答して、ここがほっとする。ここ以外もありえるかも知れないけど、ここもいい。
そう思う
今日は私の誕生日

誰もいないので母と誕生日ランチ。
誕生日特権「クリーニング半額」に夫の服を出しに行こう。

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コメント

お誕生日おめでとう!!
1年、早いですね。ブログの数だけ思い出がいっぱい詰まったサンディさんの1年でしたね。
新しい1年も健康で、楽しいこと満載の日々を!
(このワンちゃんの背景もほんわかして好きです)

投稿: つっさん | 2007年7月 2日 (月) 10時50分

どうもありがとう。
還暦は生まれ変われるようでうれしい気もしたけど、
一年たっても何の成長もないことに気付き
1歳年取っただけで、あまりうれしくもない。
そんな気分でありますが、変わらないことがいいことなのかとも思い直す、
この前向きというか開き直りのいい性格!?

投稿: い | 2007年7月 3日 (火) 16時17分

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