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2007年4月 9日 (月)

『まほろ駅前多田便利軒』 三浦しをん

まほろ駅前多田便利軒 2006,3 文藝春秋  13冊目
私がこの小説を知ったのは作者が地元を案内しながら、作品を語るというテレビだった。
その地とは「まほろ」、私がもう数十年最寄り駅としているところだった。
「奇妙な喫茶店」の話を聞いて「なんか知ってる気がする」と思ったのだ。

それから図書館にリクエストして半年。
そんな「まほろ」の駅前で便利屋をしている主人公はひょんなことから
高校の同級生と住み始め、さまざまな事件、仕事をこなしていく。

そこに出てくる「まほろ」の街は私の知っているその街と同じで、
そのためにわれわれは(帰ってきていた娘と読んだ)読むのに少し時間がかかったね、と話した。
なぜって、街の片隅のところの説明をここはあそこだ!ここはどこだ?って
いちいち確認しながら読まないとソンした気になるからだ。
その描写はほとんど実在の街そのままと言ってよい。
ただし少し前の状況だけれど。
私は住んで長いのでそれもよくわかる。
作者もこの町がすきなのだね。
「目を閉じていても思い浮かぶ、まほろ駅前の町並み。・・・もう終わりにしたいと願ってたどりついたのに、そこにはいつも、新しい旅のはじまりが準備されているのだ。
失ったものは完全に戻ってくることはなく、・・・
今度こそ多田ははっきりと言うことができる。
幸福は再生する、と。
形を変え、さまざまな姿で、それを求めるひとたちのところへ何度でも、そっと訪れてくるのだ。」

第135直木賞受賞作品。

多田便利軒の一年描いた物語。
誠実に便利屋の仕を営もうとする多田(彼も何か背負うものがある)と、仕事を手伝うのか、邪魔しているのかという同級生の行天(彼もまたよくわからない、不思議な雰囲気だがどうもハンサムらしい)のンビが、いい味をしている。読みやすくしかもあきない。最後ま一気に読ませ、娘は2時間、私は4時間程度で読み終えた
いやな本はこうはいかないね。

全体を流れるテーマは「家族」。
それぞれみんな家族や愛する人、信じあえる人を求めている。
失った家族への思いなどそれぞれの想いがあるが、
それを真正面から突っ込んで書くことはせず、
まわりからじわっと語るのみ。
こころ痛いほどには明白にはしないのだ。
誰もがみんな失ったものや悲しみを抱えて、それでも生きていく。
そんな背景が、軽語り口の物語に厚を与えている。
挿絵がまた漫画家の村富美という人で、若者向けのコミックのようでもあり、
軽く読めたが、そこはかとなくほんわかと感動。

今度街を歩くときはそんな目でも見るのかな。

内容(「BOOK」データベースより)
東京のはずれに位置する“まほろ市”。この街の駅前でひっそり営まれる便利屋稼業。今日の依頼人は何をもちこんでくるのか。痛快無比。開巷有益。やがて切ない便利屋物語。

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コメント

こんばんは。
コメント、ありがとうございました。

住んでいる街が舞台になっているって、ステキですね。
読んでいても楽しいだろうなと思います。

この本は、登場人物のキャラもおもしろいし、軽く読めちゃうんだけど、家族のつながりとかを描いていて、いい話になっていると思います。

投稿: mint | 2007年4月17日 (火) 19時39分

こんにちは
ミントさん
そうですね。とてもいいお話でしたね。

しかもそれが知ってる街角なので
面白かったです。
ここで行天が刺されてた!とかね。
では、また

投稿: いち | 2007年4月18日 (水) 18時28分

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