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2006年10月26日 (木)

『インディアナ、インディアナ』レアード・ハント

インディアナ、インディアナ インディアナ、インディアナ

著者:レアード・ハント
販売元:朝日新聞社
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2006,5  36

内容(「MARC」データベースより)
切れぎれの回想、現在のノアの心理、ノアの父ヴァージルや母ルービーをめぐる一連の奇妙な逸話等々…。年老いて病んだ男の人生の喪失感とユーモアが美しい、人気翻訳家が惚れ込み、ポール・オースターも絶賛の本邦初翻訳小説。


不思議な本。心の中でとりとめもなく考え、浮かんでくるさまざまな記憶と思い。
それは夢のようでもあり、深く思索しているようでもある。
次から次へと続いて何行にも及ぶ一文。
有名な翻訳家としてはそんな文章に意欲が湧いたのかも知れない。

はかない切れ切れの糸で織りなされていく物語。
主人公の心。
自分自身を猫の目で想像してみる。
自分自身を別の自分が見ている、など。
そんなことを考える純粋なノア。
一般人とは少し軸がずれているが感性はとぎすまされている。

「…まあとにかくお祈りは唱えても損にならないよとルービーに言われたのでそのとおりにした。…まず最初にわたしはキリストに仕える漁師になります、と唱え、何分かしてから、わたしはキリストに仕える魚になります、と唱え、それから、ただ単に、しかし絶叫して、私は魚になりますと唱えた。」

「わしらのやることは、つねに正しいとは限らんのさ。
どうして?
わからない。
どうしてつねに正しくなれないの?
ヴァージルは答えなかった。
あなたが僕たちにしたことは正しかったの?
うん、正しかったと思うよ。少なくともあのときはそう思った。いや、わからない。」

アメリカの真ん中のインディアナの真ん中の小屋でひとりノアは考える。
目に見えるものから見えないものを、
心の中のものから自分のことを。
失ってしまった自分の大切なものを。
過ぎた時間、無くした時間。

私は空想が好きだ。
私も時々こんな風に心の中で考える。
一つのことからいろいろとつながってどんどん先へ進んでいってしまうことがある。
家族と話していても、
みんなで楽しい空想話をどんどん展開させる。

しかし
それを文にするのは非常に難しい。
それをこの本は現実と絡めて見事に文章にし、本にしている。
心の中のとりとめのない思い、彼の寂しさ喪失感を表現していく中で
次第にその現実もわかってくる。

何だか不思議な本、嫌いな人は嫌いだと思う。
「なんじゃこりゃー」って思うかも。
設定や人物関係もまずよくわからない。
ふわふわした霧の中をさまよう感じ。
筋を追って急いで読む本ではない。
言葉の中に入って文の間の空気を読んで自分もそこに浸っていく本。

じっくりと雨の降る日に浸って読みたいと思っていたが
実際は
日本シリーズのテレビの前で
一段と重くなった孫っちを抱いての読書であった。

しかし
読んだ今、読後感は悪くないのだから、
たまにはいいかもね。

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