« 木の効用 | トップページ | 大津へ(1) »

2006年4月 7日 (金)

「舘野泉 ピアノリサイタル」NHKBS

娘が近くに定期検診に来ていたが
疲れたのでこのまま家に帰るという電話があった。
「安静にしてね。」と電話を切って、空いた時間に偶然見たNHK BS。

舘野 泉さん。
私はこの人のドキュメンタリーを前に見たことがある。で、気になっていた。
ピアニスト歴40年を越えていた彼は2002年1月フィンランドのステージ上で脳溢血で倒れ、右半身不随になった。
調べてみたらかなり有名な方で100枚のCDを出し、「北欧のピアノの詩人」として全国にファンクラブがあるそうだ。(どうも失礼!)

激しい苦悶を経て、自由に動く左手でピアノを演奏するまでのドキュメンタリーだった。
息子さんに「左手で弾く曲」の楽譜をプレゼントされたのが新しいスタートのきっかけだったらしい。

「音楽がある」という手応えを感じました。それ以降、左手のピアノの音楽を奏でることにより、そこに新たに、“音楽と繋がる、人と繋がる、そして世界と繋がる”素晴らしい世界を知りました。

そしてそのリサイタルである。(2004年11月21日東京オペラシティで録画)
舘野泉のために書かれた左手のための作品から、間宮芳生「風のしるし」、ノルドグレン「小泉八雲の『怪談』によるバラード・」岸田今日子の語りも入れて。
間宮芳生作「風のしるし」は軽やかで心地よい。

「人が常識で考えるほど、左手の世界は不自由で狭いものではない。十分に自分の心をおくことが出来、両手のものに何ら遜色の無い、充足して立派な表現が出来る音楽の世界なのである。」

「ぶきっちょと言われる左手だけで弾くからといって、よく考えられるように、音も少なく簡略化されて易しくなったわけではない。同時に進行する、複雑に絡み合った多声部それぞれの色合いを、片手で弾き分けるのも至難の業である。だが、難しさとか易しさは究極の問題ではない。何を伝えられるかこそが大切なことであろう。そして、それを実現できた時の喜びは大きい。」

「ピアノを弾き始めてから65年、演奏家としての生活は45年になる。脳溢血により、長年弾き込んだ膨大なレパートリーが一瞬にして消え去り、さぞ口惜しいことでしょうと言われる。だが、そんなことはない。今まで弾いて来たものは、自分の中にしっかりと蓄積されているのである。無になったわけではなく、血となり肉となり、己の呼吸となっているのだ。だから、自分の演奏には、たとえ左手だけであっても65年の支えが土台としてしっかりあるのだと思う。有り難いことだ。」(エイベックス HPより)

言葉の一つ一つに説得力がある。

音楽で何を伝えられるか。
そこから我々は何を受け取れるか。

演奏が終わったあとに
静かに音が収束していく時間
何ともいえない気持ちにさせる。

「私はピアニスト生活40周年を数えた翌年、病気に倒れました。そこで出会ったまったく新しい世界…まるで私は2人のピアニストの人生を生きているようです。」

5本の指だけ、しかも左手だけの表現は、優しさと透明感に満ちている。
よけいな装飾はそぎ落とされ、音楽の、音の本質が清らかに集約されて、聞くものに迫るようだ。
おまえはしっかり聞いているか、と。
じっと膝の上に置かれた右手は彼の心の中で音を奏でているようだ。
前から叙情的で透明感のある音楽を奏でる人だったらしいが、
更に何かが加わっている気がする。

人間ってすごい。気持ちが大事なんだな。
こんな風にどんなときも前向きでいられたら良いと思う。

終わったあとの番組が非常に大きな音で驚いた。
聞き逃すまいぞと、音量をどんどん上げていたらしい。

エッセイ「ひまわりの海」にも書かれている。

風のしるし・オッフェルトリウム―ピアノ(左手)のために Book 風のしるし・オッフェルトリウム―ピアノ(左手)のために

著者:間宮 芳生
販売元:音楽之友社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ひまわりの海 Book ひまわりの海

著者:舘野 泉
販売元:求龍堂
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« 木の効用 | トップページ | 大津へ(1) »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

サンディさんのブログを読んで感動しました。私も以前に聞いたことがあり、すごいなあと思っていましたが、あらためて胸に響きました。紹介してくださった本やCD、機会があれば読んで(聴いて)みたいです。何かが起こったとき、それまでの人生は決して「無になる」わけではないのですね。とても勇気を与えられる言葉です。

投稿: つっさん | 2006年4月 7日 (金) 18時05分

こんにちは、つっさん
わたしも一言一言がしみいりました。若いときからとても素敵な人だったそうです。友人はそのころから聞きに行ってるそうです。
神様はそんな彼をもう一段高い場所へ上げることを選んだのかな、などと思いました。二倍の濃い人生ってことでしょうか。
CDでゆっくり聞いてみたいと思いました。

投稿: い | 2006年4月 7日 (金) 18時12分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「舘野泉 ピアノリサイタル」NHKBS:

« 木の効用 | トップページ | 大津へ(1) »